部活で恋愛なアニメ映画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の部活で恋愛な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年03月05日の時点で一番の部活で恋愛なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

71.6 1 部活で恋愛なアニメランキング1位
デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章(アニメ映画)

2024年3月22日
★★★★☆ 3.8 (61)
249人が棚に入れました
東京で女子高生ライフを送る小山門出と中川凰蘭。学校や受験勉強に追われつつも毎晩オンラインゲームで盛り上がる2人が暮らす街の上空には、3年前の8月31日から、突如現れた巨大な宇宙船「母艦」が浮かんでいた。異様な光景は日常に溶け込み、当たり前となっていたが、ある夜、東京で悲劇が起こる。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

クソやばい地球人の青春に遭遇した宇宙人には同情を禁じ得ません

3年前“8.31の悲劇”以来、宇宙からの“侵略者”の巨大<母艦>に覆われる東京。
その下でハイテンション女子高生ライフを送る主人公少女らの日常と、
<母艦>という非日常が混ざり合う中で、やがで開示されていく真相と共に、日常と世界の破滅が示唆される同名コミック(未読)の劇場アニメ化作品の前半部。


【物語 4.5点】
作風は青春の一頁が世界の一大事とシンクロするセカイ系の再生産。
2014~2022年連載作ということで東日本大震災後、コロナ禍の世相も取り込んだ人間&世界模様が描かれる。


大抵のセカイ系でイタいのは主に思春期主人公の周辺になりますが、
本作の場合は災害、事故での犠牲者ニュースをも、スマホゲーのイベントと並行してコンテンツとして高速消費して、飽きたらもうオワコンだと使い捨てていく情報過多社会の病理。
マスコミを不信する余り、ネット上の陰謀論界隈に沼る母親。
個体ごとの正義を絶対化し、SNS上でマウントを取り合うまででも十分イタいのに、武器を持って傷つけ合うまでエスカレートする人類の異様。
など、東京及び日本、地球全体がイタくて終わってる感が、痛いトコロをマシンガンのように撃ち抜く台詞回しによって醸し出されています。

大体、宇宙からの“侵略者”として<母艦>に防衛利権の匂いをプンプンさせながら、大仰なレーザー兵器で攻撃を仕掛けているわけですが、
彼らの目的が侵略かどうかなどは真剣に議論されることはなく。
そもそも実は{netabare} “侵略者”が直接手を下した犠牲者はゼロなのでは?とすら思います。
8.31の被害は<母艦>を<A爆弾>により攻撃した米軍によるものですし、
作中での犠牲者も小型&中型船への“防衛行動”の巻き添えを食ったものなのではないでしょうか。{/netabare}
リスクをあると決め付けた人間社会のおぞましさ、滑稽さの炙り出しも上々です。


人間視点のSFとして挑むと、全体に日常がとっ散らかった感、
後半、主人公少女2人の青春が事の発端と結びついた回想という、世界がひっくり返るシナリオ転換などに振り回される危険性もあります。

が、私の場合は冒頭から、これは地球人を観察する宇宙人の視座で俯瞰した方が折り合えると割り切って観たので何とか付いて行けました。

特に産業革命以後、200年程度という宇宙から見れば瞬きする間に、
文明を急発達させ、爆発的に増殖し、地球を壊す勢いで戦争や大量虐殺(ジェノサイド)を繰り返して来た人類。
この原爆を持ってしまった猿の如きキモい地球人。
果たして心の成熟は伴っているのだろうか?
ちょっと“イソベやん”の“内緒道具”を渡して裁定してみよう。

前章終わった段階で世界は一層波乱含みですが、
後章に向けて、命綱となるテーマは提示されていると思うので、
手応えを感じながら後半戦に挑みたいです。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・ Production +h(プラスエイチ)

個人的に、初代『ガンダム』、今敏監督の方の『パーフェクトブルー』など、
人間の顔ってちゃんと観察すると美形一辺倒ではなく、
時に昆虫の如く気持ち悪くもある。
そこを再現できている人物デザインに対しては点数を盛る傾向にありますが、本作も同様。
私は特に、おむすび顔に円な瞳のメガネ娘・出元亜衣のデザインが好きです。

<母艦>周辺に揺らめくレタリング?が、
ゴシック体で打ち出される作中テロップの生成、解体過程でも垣間見えるのも意味深。

観察者視点に一歩引かせる地球人デザインと、テロップのレタリングが、
私を冒頭から宇宙人視点に誘導した主因。


細部の背景美術にも社会風刺などを含んだ表現が散りばめられ情報量は多め。
私の脳裏に焼き付いているのは、8.31以降は数える程しか出ていない“侵略者”への防衛行動での民間犠牲者。
それをトップニュースで大騒ぎする傍らで映し出される交番の看板。
<母艦>関連を遥かに凌ぐ数の交通事故死傷者数。
この辺りも騒ぐと決めたニュースばかり取り上げるメディアと、
反発して陰謀論に囚われるネット民という両極端を想起させられジワジワ来ます。


総じて巨大<母艦>の大技だけではない、地球人のイタい所を表現する小技も効いた刺激的な作画です。


【キャラ 4.5点】
主人公の眼鏡っ子・小山門出(かどで)
ロングツインテールの中川凰蘭(おうらん)こと“おんたん”
メイン2人に、恋愛リア充を目指す栗原キホ、出元亜衣、
無口な長身黒髪ロング・平間凛。
JK5人グループが頭のネジが外れた掛け合いを繰り広げて、
<母艦>の非日常に対峙する日常世界を構築。

例えば門出は担任教師の渡良瀬を慕っていますが、
この教師と生徒2人の会話も、ちゃんとした型に収まり切らない人間と青春を示唆していて不謹慎で面白い。

あとは、おんたんのイケメンメタボな兄で“ネット監視員”(ニート)のひろしが挑む、
SNS空間に広がる“情弱”どもの“総意”とか。

全体に、情報社会に監視されることを前提として、
火を点けられないように社会が強いた役割を仕方なく演じてやってる倦怠感が滲み出ており、
これもまた地球人のオワッてる感を濃厚にします。


【声優 4.0点】
主演・小山門出役にはYOASOBIのボーカルとしても活躍する幾田 りらさん。
相方の中川凰蘭役には、あのさん。
メイン2人にアーティストをオーディション選出して周りをアニメ声優で固める布陣。

“ナチュラル”なボイス素材を求めてのアーティストの主演起用。
確かにおふた方とも、地声が高音スウィートなアニメ声で天然素材としては上質。
ですが、私はやはり自然体を求めるにしても、演技力を磨き上げた声優にナチュラルな演技をさせるのがベストと考えるので、この点数が上限。

ただアーティスト2人でと決めた以上は、
下手に声優の枠にはめずに、2人の表現者としての感性に任せるという判断は、素材を活かす上ではベターな選択。
掛け合いシーンでは同じ歌手ならではの波長が合い、
仲良く喧嘩する良いリズムが生まれていたそうで。
声優陣も交えたJK5人組のバカ騒ぎの空気感もスムーズに出ており心地良かったです。

原作者いわく、アフレコ時は、主演おふた方とも作品世界に入るための準備はしてくれていたとあって、
宣伝目的で起用した俳優・タレントを“お客様”扱いする劇場アニメ作品よりは良好な仕上がりだったと感じました。


EDクレジットの最後には、
門出が愛読する作中漫画でシナリオにも深く関わる黒い『ドラえもん』?wこと「イソベやん」にて、
イソベやんに“内緒道具”をせびる自堕落女子・デベ子を演じたTARAKOさんへの追悼コメントが表記。
『ちびまる子ちゃん』のさくらももこ役など、だらけた演技も天下一品の楽しいお方でした。
ご冥福をお祈り致します。


【音楽 4.5点】
情報過多な東京の日常社会に溢れる生活音、
そこを切り裂く<母艦>絡みの非日常の異音、放たれるレーザー兵器の発射音など、
立体的に表現された音響は、本作劇場鑑賞の一番の意義と言っても過言じゃありません。

主題歌は主演アーティストのお二人が担当。

前章はano feat. 幾田りら「絶絶絶絶対聖域」
作編曲を凛として時雨のTKが担当。

曲調はテンション高めの無邪気な作風ですが、
歌詞世界は“地球オワタ”“地球が壊れたよ”などとシッカリ病んでいるので油断は禁物ですw

投稿 : 2025/03/01
♥ : 22

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

衝撃作です。青春と正義と災害を描いた壮大な日常系本格SF。追記 2回目見ました。

 インデペンデンスデイ、ニーアアンダー7、ヒドゥン、デスノート、マイケルサンデル、ゴジラ、時をかける少女、311、機動戦艦ナデシコ、タコピーの原罪、ドラえもん…の要素が入った日常系です。
 他にもあるでしょうが、要するに要素が多いです。それぞれの視点で分解する難易度は高くないです。

 いや、すごかったですね。上映時間120分らしいですが、体感時間は80分くらいかな。情報量は180分くらいのが圧縮されている感じです。ジェットコースターの様でいてのんびり女子だけ(ではないですが)青春ものでもあります。

 浅野いにお氏の作品は「うみべの女の子」が好きで何度も読んでいますが、それ以外はどうも性が合わず本作も1話を試し読みかにかをして切っていたと思います。ただ、本作を見てやはりマインドは一緒かな…と。読んでみたくなりました。結末は違うと公言されているみたいですし。

 大人になる意味、現実社会に生きる思春期の精神の中身といえばいいのでしょうか。進路、恋愛、性、親、天才と凡人、いじめ、正義、友人…そういうものが襲い掛かってくる小学校から高校時代の生きづらさをSF的表現で見せたような感じです。

 災害のオマージュとして、日常と非日常のシームレス感あるいは断絶感が同時に存在するような作品ではありますが、一方でこの思春期に襲ってくる精神的なクライシスのオマージュとも見えます。

 テーマは結末を見ないと何とも言えませんが、ストーリーとしての結末は分かりませんけど、思春期の落としどころになるのかなあ、という気はします。

 特筆すべきは映像がすごい…というと語弊がありますかね。2次元アニメ的なアニメ表現ですが明らかに3DCGですよね。見やすいのなんの。エフェクトだよりでなく、戦闘シーン頼りでもないです。それでいて構図はいいんです。

 脚本も詰め込んだなかに映像表現で上手く補完しているので、結構頭を使わなくても話の筋は素直に読めます。伏線とか考察とかそういうのを無理にする必要がない分かりやすさです。考察系とエンタメ系の要素のいいところが上手く組み合わさっています。演出も面白さと迫力と緊迫感と上手く表現できていたと思います。

 むしろ頭を使うのは別のところですね。頭がクラクラします。SFと書きましたけど表題がデーモンなので…まあ、それは後半ですね。

 稀にみる名作になる可能性を秘めています。後半次第ですけど。私は絶対に行きます。
 で、映画で一儲けした後でいいので、120分×2で240分です。つまり20分×12で1クール行けますよね?広く世間に公開してはどうでしょう?

 私平日に見ましたが、サービスデイなのに2人しかいませんでした。この作品が埋もれるのはもったいないです。



追記 無理無理時間作って前章も見てきました。

 後章がもう始まっていますが、なんとか上映館を見つけ無理無理見てきました。やはり面白いのは前章、感動・深さは後章という印象です。

 前→後→後→前という順番で見ました。

 で、2回目を見て気が付きました。この作品は「これからどうなるの?」がとても素晴らしい構成にまとめられています。ですので、面白さで言えば1回目が圧倒的に面白かったです。

 ただ、後章をみてから前章を見ると、ああ、そういうことか…とか、微妙な伏線に気が付いたり、意味が重層的になったり見方が変わったりという深堀りができるようになります。

 まこととふたばがなんで田舎から出てきたの?とか東京という意味が分かってくると味方が変わります。
 あるいは、前章の小学生の門出の正義と、後章のシップと小比類巻の正義の対比の構造とか面白いですね。
 イソベやんはもちろん「トモダチ」ですが「未来」「正義」「便利道具」などなどいろんな意味を後→前で見ると感じました。

 で、あとはアメリカで12巻まで含めたであろう、配信版が始まったらしいですね。コミックスで確認しているので、マストではないですが、見たいものです。

 あと、EDのANOさんという声優の人の曲の入りは本当に良かったです。(いやもちろんANOさんという人の名前と顔くらいは知ってますけどね。歌手だったんですね)

投稿 : 2025/03/01
♥ : 12

takato さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

後章前夜に一挙轟音上映をやるだってぇ〜!!??。(お金は何処からも貰っておりません)

 まだ前編なので評価は確定できませんが、評判通りの次が楽しみな意欲作です!。


 原作は読んでないし、浅野さんの作品は弟が中2期に「プンプン」にはまっていたのを横目で見ていたくらいであんまり縁がなかったですが、本作は「地球外少年少女」を制作した新鋭のProduction +hが手掛け、脚本はお馴染み吉田玲子さんと私の興味を引く要素が揃い、信頼がおける方々の評価も高いので見に行っちゃいました(監督さんの前作が評判悪いから二の足を踏んでたのですが)。



 第一声としては、やはり「セカイ系」はこういうダークな破滅へ向かう話のがイイネ!ということに尽きます。新海さんの「君の名は」以降の作品や「シンエヴァ」も、独りよがりなくらいにセカイ=自分であるが故に現実の世界や他者に対する恐怖だったり不安だったりがダイレクトに出ていた、歪だからこその魅力だったのに作家性を捻じ曲げて無難な大衆性に着地しちゃった感が物足りなかった。


 しかし、本作はちょっと直接的過ぎなくらいだけど、社会というトンネルのカナリアとも言える作家が3.11後やコロナという不安を感知して描いた作品として非常に社会性が高い。だから立派で価値がある!なんて言いませんが凡百の作品より遥かに興味深く、かなり風呂敷も謎も広がっているのでどう収拾するのか?或いはケンイシカワの如くぶっ壊して終わるのか?。とにかく続きへのヒキが素晴らしい。


 アニメーション全般としては、浅野さんのとは少し違うかもだが背景とキャラが非常に上手く調和していて、主張し過ぎないが実に良い「雰囲気の魔術」を産み出せてるし、タレント声優ともいえる主役の二人も非常にはまっている!。デブ過ぎるがイケメンな諏訪部さんのお兄ちゃんも良かった。ただ、声優といえばまさか本作がTARAKOさんの遺作とは知らず驚きました。イソベヤン、漫画の中だと杉田さんなんだから劇中でも杉田さんの方が良かったのになぁ…ってもあります。


 まぁ、後半で力を得たあの子がああなっちゃうのはちょっと展開に無理ないか?とか、親が毒親なのもなんか作為的な毒親感で少々不満もあった。これからはわかりやすい明白な毒親より、全然悪人じゃなくて一般的には良い親なくらいなんだけど根本的に大切なことに対して無力だったり思考停止してたりするリアルな駄目親の方が描かれて欲しい。


 繰り返しになっちゃいますが、結局まだ前編なので評価は保留な感じですが、とにかくこの物語やキャラがどんな結末に行き着くのか見たくてたまらなくさせてくる作品ではあることは間違いないでのオススメです!。子供時代のオンたんだけで個人的には良し!。

投稿 : 2025/03/01
♥ : 13

87.6 2 部活で恋愛なアニメランキング2位
劇場版 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~(アニメ映画)

2019年4月19日
★★★★★ 4.3 (429)
1986人が棚に入れました
昨年度の全日本吹奏楽コンクールに出場を果たした北宇治高校吹奏楽部。2年生の黄前久美子は3年生の加部友恵と、4月から新しく入った1年生の指導にあたることになる。全国大会出場校ともあって、多くの1年生が入部するなか、低音パートへやって来たのは4名。一見すると何の問題もなさそうな久石奏。周囲と馴染もうとしない鈴木美玲。そんな美玲と仲良くしたい鈴木さつき。自身のことを語ろうとしない月永求。サンライズフェスティバル、オーディション、そしてコンクール。「全国大会金賞」を目標に掲げる吹奏楽部だけど、問題が次々と勃発して……!?北宇治高校吹奏楽部、波乱の日々がスタート!

声優・キャラクター
黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、石谷春貴、藤村鼓乃美、山岡ゆり、津田健次郎、小堀幸、雨宮天、七瀬彩夏、久野美咲、土屋神葉、寿美菜子、櫻井孝宏

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

群像劇としての厚みを出す為に台詞は一言もいらないということを学びました【LIVE ZOUND&イオン幕張ULTIRA感想追記】

※以下の本文では2018年の映画『リズと青い鳥』の略称を“映画『リズ』”、劇中に登場する楽曲「リズと青い鳥」の略称を“「リズ」”、劇中劇としての童話「リズと青い鳥」の登場人物は“リズ”と表記しています


2015年の第1期テレビシリーズ、
2016年の劇場版総集編『北宇治高校吹奏楽部へようこそ』と第2期テレビシリーズ、
2017年の劇場版第2作『届けたいメロディ』、
2018年の映画『リズと青い鳥』、
それらに続く『響け!ユーフォニアム』シリーズの完全新作長篇映画


結論から先に言ってしまうと、【『届けたいメロディ』と『リズと青い鳥』は本作やテレビシリーズとはパラレルワールド】と割り切ってください
本作の世界観は【テレビシリーズ第2期の続き】になりますので特に映画『リズ』との整合性は一致しません
メインスタッフはテレビシリーズでお馴染み、石原立也監督、花田十輝脚本、池田昌子キャラデザ、音楽は松田彬人、京都アニメーション制作


昨年度、全国大会出場を果たすも銅賞に終わった北宇治高校吹奏楽部
ユーフォニアム奏者の黄前久美子は同級生でトロンボーン奏者の塚本秀一の告白を受けて付き合いだす
久美子達は2年生となり、新たな体制となった吹奏楽部で改めて全国大会金賞を目指すことに
昨年度の全国大会出場と、顧問の滝昇先生の人気も相まって新入部希望者は潤沢
低音パートにも4人の1年生が入ってきた
しかし新入生でチューバ担当の鈴木美玲は卓越した演奏技術を持っているものの協調性が無く、同じ低音パート部員達にも馴染めていない
さらに久美子の直接の後輩に当たるユーフォニアム担当の1年生、久石奏もまた社交的な表の顔とは裏腹に部活動そのものに含むところを持っているよう
1年生の指導員を兼任する久美子は1年生の抱える問題を「めんどくさいな~」と口にしながらも積極的に支えていくことになる…


『リズと青い鳥』を除けば『ユーフォ』シリーズにとっては初の完全新作の長篇
劇中ではかなり長い年月の多岐に渡る出来事を合間合間を区切りながら描いており、非常に濃厚な内容の映画と言えるでしょう
具体的には起承転結が3回以上繰り返すと思っていただいて結構です


これまでのシリーズを踏まえた作品なので、最低でも総集編映画である『北宇治高校吹奏楽部へようこそ』と『届けたいメロディ』の2作はご覧になってから今作をご鑑賞いただくことをオススメします
と、言うのも今作の久美子はとても主人公らしい牽引力を持った人物として描かれますが、それは久美子が1年生の時に“アレだけ色々な事件を経験してきた”からなのです
特に印象的な部分で一人になった久美子が「響け!ユーフォニアム」という楽曲を演奏してあすか先輩のことを思い出したり、吹奏楽の原初的体験である姉との思い出を振り返ったりするシークエンスは、そのシークエンスが持つ久美子の心理描写をセリフや表情だけでは読み取れない形にした高尚な演出になっていると感じることでしょう


また劇中でコンクールの自由曲として選ばれる「リズと青い鳥」という童話をモチーフにした組曲が持つ物語性については、映画『リズと青い鳥』の中で詳しく描かれているので興味があればそちらも是非どうぞ
ただし先述の通り映画『リズ』はパラレルワールドであり、今作と整合性は一致しません
具体的には映画『リズ』劇中の傘木希美だと、ソリストになるだけの実力に及んでいないこも
映画『リズ』劇中で本来はオーボエとフルートが掛け合いをするパートを、(遊び半分だと思うが)久美子と麗奈が練習していたシークエンスが今作には存在しないこと
今作の鎧塚みぞれの性格が明るめに描写されているのでシリーズでは比較的に最も好転的なみぞれが描かれた『テレビ第2期』或いは描写が無かっただけで可能性としては存在する『届けたいメロディ』の世界観の続きと考えるのが自然なこと
この3点から映画『リズ』はパラレルワールドだと推測が出来ます


さて、「リズ」という楽曲を踏まえた上でクライマックスの演奏シークエンスまでに描かれる“群像劇としての『ユーフォ』”について話したいと思います
よくオイラは群像劇が好きだという話をするんですが、『ユーフォ』って登場人物が多い割りにスポットが当たるキャラが非常に搾られていて、ソレはソレでまとまっているという肯定的な観方も出来るんですが、登場人物は多ければ多いほど物語に厚みが欲しい派なんです、オイラは
そういう意味で『ユーフォ』は諸手を挙げて絶賛出来る作品では無かったのですが今作で少し考え方が変わりましたね
と、いうのも劇中では度々にみぞれと希美という2人が見切れるカットがあり、この2人がメインストーリーライン上はともかく、北宇治高校吹奏楽部の、特に「リズ」という楽曲に関しては欠かすことの出来ない重要な人物であることが多くを語らずに表現されているのです
「リズ」の第3楽章が始まるとオーボエとフルートがそれぞれ青い鳥とリズを表現する掛け合いパートがあり、それがこの楽曲において最も印象的なフレーズとして幾度か登場します
そこでこの掛け合いを演奏するのがみぞれと希美というわけ
ですがこの超重要人物2人、なんと台詞が一切として無いんですよね
声優もクレジットされてないのでガヤ等も含めて台詞ゼロは間違いなさそうです
この2人の関係性についてはテレビ第2期、或いは映画『リズ』で散々語られているので今更何か付け加えたところでメインのストーリーラインが散ってしまう恐れもあり、あえてモブの一部として扱っているということなのでしょう
そうまでしてもみぞれと希美を登場させているのは、この2人の存在こそが「リズ」という楽曲の物語性を引き立てているのだと、クライマックスで気付かせる為なんですね
台詞の無い登場人物から物語の厚みを感じるとは…いやはや恐れ入りました
思わず演奏シークエンス中に泣いてしまいましたからね;;


メインのストーリーライン上かかすことの出来ない人物として新1年生も加わり、物語は新しい局面を迎えます
特に鈴木美玲は卓越した演奏技術を持ちつつも孤立しがちな高坂麗奈と似た様な側面を持ちつつも、実際は麗奈ほど孤独を愛しているワケではない“弱い麗奈”とも言える存在であること
そして久石奏もまた、他人との距離感を計ることが得意ながら性根が捻じ曲がった“歪んでしまった久美子”と言える存在であることなど、久美子達2年生世代との対比になるキャラとして設定されてるのが面白い


原作では3年生になった久美子達の物語がいよいよ始まったようですが、3年生篇のアニメ化は正直難しいかもしれませんね…
今作では1年生指導員になったことでまるで悟りを開いたかのような落ち着いた様子で物事に対処する達観した態度の久美子が徐々に見受けられるようになっていきます
でもそれってつまり久美子にその任を指名した、恐らく吉川優子部長と中川夏紀副部長の才なんだと思うんですよ
久美子世代が入学する前に部の雰囲気を険悪にしてしまったのは優子世代ですし、麗奈と香織先輩のソロ争いに物申したのも優子自身、今作で奏ちゃんが途中憤慨するキッカケは夏紀ですし、映画『リズ』の主役は言うまでも無く優子世代
これまでの北宇治の事件には、常にその中核に優子世代がいたわけです
実は物語上の最大のキーパーソンは優子世代だったということになりませんか?
“なかよしがわ”と“のぞみぞれ”がいなくなった北宇治はあんま観たくない…;
というのがオイラの本音ですね


(とか言ってる間に3年生篇のアニメ化が決定しました、オイラが言いたいことは上記の通りなのであとは原作がめちゃくちゃ面白い、とかそういった不確定要素に期待しています)


ところで早見沙織に二言しか喋らせないアニメってなんだよwww


本日、2019/6/5までに4回ほどリピートしましたが4回目に数多くの『ユーフォ』ファンが“最高”と賛辞を贈る川崎チネチッタの8番スクリーン、通称“LIVE ZOUND”が今週で上映終了とのことで初めて足を運んでみました
いや~、本当に最高です!
関東近郊で『ユーフォ』を観る上でこのLIVE ZOUNDを超える劇場は存在しないと断言できます
剥き出しのウーファー2基にフロント左右に吊り下げられたラインアレイスピーカー、と仕様自体は立川シネマツーaスタに似ています
が、箱が正方形の為、音の定位が非常にハッキリしています
環境音、つまり川のせせらぎや人混みの喧騒などに広がりが感じられますし、演奏シークエンスではドコで何の楽器が鳴っているのか、一音一音がよ~く聴こえます
低音や高温が中音にかき消されて無いんですね
序盤の「それが私の生きる道」で左手に夏紀先輩のエレキ、右手に緑輝のベースがいるのが瞬時にわかりますし、クライマックスの「リズと青い鳥」に至っては、もはやこの劇場でなければ100%の音を聞き分けるのは難しいのでは?とすら感じます
セリフ類の音量も確実に上がっているのに、不自然な圧力や歪みは感じられませんので他の上映より数段セリフが聴き取り易いと思います
メインのキャラにセリフが被ってしまっているバックのモブが、何を言ってるのかが明白に解ります
唯一、このLIVE ZOUNDについて注意が必要な点ですが、後ろの席ほど傾斜が付いていて観易く聴き易くはなっているものの、最前列になるとスクリーン位置やスピーカー位置が高いこともあってかなり観上げることになってしまう点です
最前列ではLIVE ZOUNDの真価を体感することは出来ないと思って頂いて結構でしょう


イオンシネマ幕張新都心にてセカンドラン上映が決定し、イオン幕張が誇る8番スクリーンULTIRAで鑑賞してきました
正直音の定位はまぁまぁですかね
音の定位に関しては川崎チネチッタ>幕張≧新宿ピカデリー≧その他という感じです
低音は重く響くまさに重低音という感じですが歪んだ印象は無くクリアです
でも肝心の大型スクリーンが3Dに対応する為にシルバースクリーンなんですよね…『幼女戦記』の時にも同じことを書きましたシルバースクリーンだと色調が暗めになる上に霞が掛かったような靄が掛かった様な映像になります
これはちょっと僕の好みから外れる、というのが結論です

投稿 : 2025/03/01
♥ : 21
ネタバレ

シン☆ジ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

響け。。奏(かなで)の心と、全国大会の空に!

 
はあ・・遂に視聴できた・・
劇場版外伝の『リズと青い鳥』を視聴後、配信まで待てず、いつか観なきゃと思っていましたが・・
↓↓ネタバレじゃないけど作品に関係ないので畳んでおきます↓↓
~{netabare}
2020年某月某日。
まとまった自由な時間がとれることになり、5本で安くなるTSUTAYAレンタルで映画を観よう!と、思い立ちました。
でも・・

とあるキャッチユーザのレビューを拝見して、まさかとは思ってたけど・・そのまさか。
最寄りのTSUTAYA泉古内店に置いてないじゃん・・・orz

となり街の蔦屋書店仙台泉店まで行ってもいいんだけど、ある確証はないし、泉古内店にこの後探しに来る人もいるかも知れないし・・と思い、店内の専用端末で取り寄せしました。多分取り寄せたらその店に置くんだと思うし・・

で、今になってサイト検索してみたら、蔦屋書店仙台泉店にも取り扱いなし・・ちょっとちょっとTSUTAYAさん!京アニなめとんのw

自分みたいに探して諦めてる人って結構いるんじゃないかな。
なんだかなーだよ・・
やはりここは取り寄せて正解ですよね。

ちなみに、この日レンタルした5本は・・
■冴えない彼女の育て方 fine
■青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない
■劇場版 メイドインアビス-深き魂の黎明-
■この世界の(さらにいくつもの)片隅に
■サイコパス3 FIRST INSPECTOR
 (ユーフォがなかったために急遽選定。
  後にアマプラで配信されてることが判明w)
{/netabare}~

さ、いよいよ黄前ちゃんや麗奈との再会です・・

■エピソード
おっとおおーっ!
のっけからそうきますか!ww
~{netabare}
いきなりの、告白シーン・・
久美子の困り顔いただきました(^^)/

で、久美子もOKしたみたいですねw

ユーフォって百合要素あるし恋愛エピソードないのかと思ってたのでびっくり。でも、たまこまーけっとの例もあるし、大歓迎ですよー ^^

まずは新入生の勧誘ですね。
またもやエレキギターやドラムの演奏が・・
吹部って軽音楽もやるんですね。

うへぇ・・1年めんどくせぇw
今回は彼女らが引っ掻き回してくれそうですね ^^;

劇場版『リズと青い鳥』のヒロイン、みぞれと希美は・・
ちゃんといたw

顧問の滝が選択した自由曲は・・リズと青い鳥!
やっぱそうこなくちゃね ^^

今回は吹奏楽部の生々しいドロドロも健在(?)で、本当に部活青春してました。

恋バナの展開も楽しみでした。
ひょっとして、『ちはやふる』的な展開も!?なんて期待してたんですが。
花火大会のあと、恋人関係解消って・・・・
それほど吹奏楽に打ち込みたいってことね。
さすが。この作品は一味ちがうw

コンクール会場にあすか登場。
ちょっと鳥肌が立って、ジワっときた。
魔法のチケットってなんだったのw

この作品のために書き下ろされたという楽曲『リズと青い鳥』。
演奏シーンはヘッドホン推奨です。
衣擦れの音や繊細なハープの音、全体の強弱がよく聞こえます ^^
演奏シーンは凄かった・・・
特にみぞれの演奏シーン、ジーンと来ました (;_;

なのに・・なのに。
みぞれもいるのに、麗奈もいるのに・・
『リズと青い鳥』を最高の演奏をしたのに、金賞なのに・・
全国大会行けないんですか・・
いまの今まで、金賞=優勝だと思ってました。
金賞は何校もあるんですね。
より優秀な高校が多かったってことか。

観直してみれば、演奏終わりのシーンの演出が抑え気味だったかな。
ちょっと力強さが足りないというか。

そして、そういえば、劇場版『リズと青い鳥』はこの話の並列進行なんですね・・

帰りのバスににて・・
奏:
 頑張るってナンですか。
 だからいやだったんです。
 結局ナンにもならなかったじゃないですか。
 あんなに練習して、ケンカみたいなこともして、
 夏休みなのに毎日学校来て。
 バカみたいです、こんなの。

ナンにもならなくはないよ。
でもその価値に気付くのはもう少し後かな。

あの黄前ちゃんも、遂に三年に。そして部長!
みぞれは卒業かぁ・・
でも・・この悔しさを胸に、今度こそ・・・
{/netabare}~

期待に違わぬ絵と音楽の美しさでした。
これまであまり触れられることのなかった、久美子と秀一の関係も気になりました。
やはり1年の新入部員がいい具合にかき混ぜてくれました・・

そして・・これぞ青春! ^^;


■キャラ/キャスト
新キャラ中心に・・
~{netabare}
久石 奏(ひさいし かなで): 雨宮天
1年生。ユーフォニアム担当。
遂に天ちゃんも、京アニに。
七つの大罪から注目してます。
今回、可愛いけどカワイクない、
クセのある個性的なキャラで、
しっかりイライラさせて頂きましたw
これからのキャラなので大いに期待してます ^^

鈴木 さつき(すずき さつき):久野美咲
1年生。ツインテール。チューバ担当。
ええと、どっかで聴いた声。
無彩限のファントム・ワールド(熊枕久瑠美)、
3月のライオン(ヒロインの妹、モモ)、
む、七つの大罪(ホーク)これだ・・

鈴木 美玲(すずき みれい):七瀬彩夏
1年生。高身長でチューバ担当。
cv七瀬さんは・・
慎重勇者(フラーラ)、
お!サクラクエストのヒロイン(木春由乃)、
と、まちカドまぞくの猫(メタ子)・・
今回はおとなしいキャラでしたね。

黄前ちゃん:黒沢ともよ
声優さんの中でも個性的な
セリフの言い回しですね。
声を聴くのは『宝石の国』以来かな・・
第十二回声優アワード主演女優賞受賞の
貫禄すら感じるのは気のせいでしょうか。

麗奈:安済知佳
黒髪ロングなので作中キャラでは最もタイプかな。
安済さんは・・
灰と幻想のグリムガル(メリイ)、
クズの本懐(安楽岡花火)、
サクラクエスト(緑川真希)、
刻刻(佑河樹里)、
ハクメイとミコチ(セン)、
荒ぶる季節の乙女どもよ。(菅原新菜)・・
メインも多いですね ^^

加藤 葉月(かとう はづき):朝井彩加
2年生。チューバ担当。ちょい刺さるキャラw
浅井さんは・・
え。カリメロ(カリメロ)!
スクスト(降神陽奈)・・
お世話になってます。
元気なキャラが多いですね ^^

小笠原 晴香(おがさわら はるか):早見沙織
コンサート会場に来てくれました。
早見さんもマジ天使w
{/netabare}~

水着シーン・・
宇治って泳げる川があるんでしょうか・・
これ、公園かな?
私、気になりますw

エンドロールに山田尚子さんの名前を発見・・
そういえば公開は事件前でしたね。

 原作:宝島社文庫の小説
 制作:京都アニメーション
 公開:2019年4月
 視聴:2020年11月DVDレンタル

ED後も忘れず観てください ^^
3期が待ち遠しいです。
 

投稿 : 2025/03/01
♥ : 35
ネタバレ

はあつ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

響け!久美子

待ちに待ったテレビドラマの続編。
2年生になった主人公・黄前久美子を中心に、北宇治高校吹奏楽部の新年度の1年間が描かれます。

私は原作未読で、昨年鑑賞した映画「リズと青い鳥」以外、テレビドラマ以降のストーリー情報は一切入れず本作を鑑賞しました。

その上で、テレビアニメ版のファンの1人として素直に満足できたのは、映画の100分間という限られた尺の中で「期待していたモノ」を全て見せきってくれたこと。

「愛着あるキャラ達の個性的で愛嬌に溢れた数々の描写。」
「新しい部員達も含めて描かれる葛藤と熱い思い。」
「主人公・久美子の更なる成長。」
「物語中に組み込まれる心地好さと高揚感のある数々の演奏シーン。」

テレビドラマ(特に1期)で感じたハラハラ、ワクワクの「響け!ユーフォニアム」の魅力がギシギシに詰まっています。

そして更に今回の映画で加わった強い見応え感覚はニヤニヤです♪
同じ京都アニメーション制作の「たまこラブストーリー」のような恋のエッセンスが盛り込まれているのですが、作品の部活物としての熱い雰囲気を損ねる事なく本題のテーマにしっかりマッチした二人の爽やかな進展は、テレビドラマになかった味わいを絶妙に添えています。
本映画の脚本構成の中でもっとも個人的に秀一・・もとい、秀逸に感じました。(オッサンなんでお許しを^^;)

とまあ、映画としては満足するべきなんですが、2クールかけたテレビドラマに比べると、心情描写の時間が少なくキャラクターの掘り下げも不足しているため、テレビ版2期で感じた深みのある感動や余韻は得れたとは言いがたい・・・
欲を言えば、これだけ魅力的な部員達個々のドラマ要素があるのだから、もっと尺をとったコンテで登場人物の一人一人にじっくり感情移入して悲しみや喜びを味わいたかったです。
(テレビのクール放送が無理なら、映画を前後編の2本立てにすれば、本作を観る私のようなファンは必ず2本とも観るから興収も稼げたと思うのだが・・勝手な素人勘定かな・・・制作サイドはプロ集団。この美味しい題材をもっと上手く調理出来るのを承知の上で1本の映画に詰め込んだのは業界の大人の事情なのか?3期に繋げる為の戦略であって欲しい・・)

以下グダグダとネタバレ感想です
{netabare}
「好きなんだけど・・お前を!」
秀一の告白から始まる物語の開幕シーンは自分的にはややサプライズでしたが、それに合わせたオープニングの選曲はジャスト「いい感じ~♪」
交際に絡む反応には久美子らしさが出ててニヤニヤしまくりでした。
中学生でもさっさとキスをする恋愛物が多い中、「そういうことはしない・・」って、お前ら真面目かよっ!
ツッコミながらもラインのやり取りを見て清々しく感じます。
そんな二人のコンクールを前にしての一旦の決断にも純粋なひた向きさが伝わり胸が熱くなりました。
(父親的に将来の二人の結婚を認めます^^)

めんどくさい1年生筆頭、久石奏。

CV雨宮天さんの巧みにキャラの表裏さを感じさせる好演は魅力を引き出してました。
久美子役の黒沢ともよさんとの熱演、雨中での二人の本音をさらけ出した掛け合いは本作一番のエキサイティングなシーン。
「ボケっとした顔・・鏡貸しましょうか。」の奏の毒舌には久美子に悪いがニヤっとも。
相変わらずの熱い久美子節は冷めていた奏の心に火を着けます。
そうして受け継いだ熱い思いを感じさせる「悔しくて死にそうです!」は見事な締めでした。

不憫すぎる~加トちゃん葉月。

後輩の美玲にキツイ態度をとられ、挙げ句今年もオーディション落選。それでも「ゴメンねー」「やったじゃん」常に優しく振る舞います。
描写は少なかったけど、陽気さの影で1年の時から大きなチューバを背負い必死に練習してきた姿が偲ばれ健気さに泣けました。
さつきがなついてくれるのと、サンフェスで演奏する勇姿を映してくれたのがせめてもの救いですが、この娘をコンクールの舞台に立たすためにも続編切望です~

チョッと丸くなった?「特別」麗奈。

再び大吉山のシチュエーションでトランペットの音色と魅惑的な姿にご馳走さま♪
プロ奏者を目指すと言った彼女は、まだなりたい物を見つけていない久美子の良きナビゲーターであり相談友達ですね。
この娘も続編で先生へのLOVEを捧げる演奏をぜひ見届けたい~

「ハイっちゅーもーく!」の優子部長。

前年の晴香部長より貫禄があり堂々の部長ぶりでしたが、コンクールの結果に崩れ落ちる後ろ姿が切ない~~直後の、落ち込む部員達の前での発言は立派でした。
夏紀副部長との絡みと「マジ、エンジェルー♪」が聞けたのが幸いです。


やっぱり凄い!コンクールの演奏シーン

自由曲「リズと青い鳥」のフル演奏。今回も全奏者と楽器を映しだす圧巻の作画です。(風の音を出してた回転ドラムみたいのも楽器?)
みぞれのオーボエが際立つ楽曲は、その音色もさることながら彼女を一周するカメラアングルも巧みでシビれました。
素人の耳には前年の「三日月の舞」と遜色なく聞こえ、むしろ荘厳さを感じるくらい。
しかし全国大会の切符をつかんだのは昨年の北宇治のお株を奪ったかのような、新任ゲンちゃん先生(月永求の親戚?)の龍聖学園。
結果は次年度の展開を考えれば正直予想どおりでしたが、発表の瞬間はドキドキし北宇治の部員達と共に落胆しました~( ´△`)


最後に、押しも押されぬ北宇治高校吹奏楽部の顔に

かつて「ユーフォっぽい」と評された久美子。
ユーフォニアムの楽器紹介を見ると、
低音から高音まで色んなパートに顔を出し、メロディから伴奏までこなす何でも屋。
金管楽器から木管楽器まで幅広く音を合わす事が出来る。
とありました。(知名度が低く影が薄いとも^^;)
作品で映し出される彼女の成長は、まさにその楽器を体現していくかのようです。
テレビドラマでは色んなやっかい事に顔を出しては解決に奔走。
映画では気難しい後輩達を懐柔し、辛い先輩に寄り添う事で色んな人と馴染む術を身に付けます。
劇中、奏に指摘されて見せた本心、演奏を「上手くなりたい」の邪魔になるとわかりながら上手く立ち回ってでも皆と合わそうとする自分の事も認めようとする思いは、久美子自身がユーフォニアムのようでありたいと願っているのかも知れません。
そんな彼女が部長として率いる北宇治高校吹奏楽部の頂点への挑戦と、その先に待つ歓喜の光景が今から待ち遠しいです。{/netabare}

投稿 : 2025/03/01
♥ : 39

62.3 3 部活で恋愛なアニメランキング3位
薄暮(アニメ映画)

2019年6月21日
★★★★☆ 3.1 (53)
163人が棚に入れました
福島の女子高生―ヴァイオリンだけが取り柄の、どこにでもいる少女。福島の男子高校生―絵を描くだけ、それで生きてきた。震災の影も彼に宿っているのだろう。とある田園風景の中で、そんな二人は出会った。ぎこちない邂逅、それがやがて「恋」へと発展する。それがどんな奇跡を生むかはわからない。儚く散るひとときの夢物語なのかもしれない。でも、彼らは出会った。この土地で、この場所で、世界の息吹を感じながら、彼らは人として生き、価値観を共有し、恋をする。

声優・キャラクター
桜田ひより、加藤清史郎、下野紘、島本須美、福原香織、雨宮天、佐倉綾音、花澤香菜
ネタバレ

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

薄暮は特別な景色だった。だけど、あなたがいる景色のほうがもっと特別になった。

福島県いわき市を舞台とした、
山本寛監督による「東北三部作」の最終章。

東日本大震災によって、
心に負うものがある二人の高校生が主要人物です。

といっても東日本大震災のことが深く描かれるわけではなく、
「体験した」と語る程度のものですが。

50分程度の作品です。


● ストーリー
小山佐智(こやま さち)は高校1年生になった。

高校では音楽部に入り、
小さなころから続けているヴァイオリンを続けることにした。

高校生活の楽しみは、帰り道。
一人で田舎道の夕暮れを味わうことだった。

ある日、いつも帰り道のバスで一緒になる少年から声をかけられる。
美しい夕焼けを描くのにいい場所を探しているのだという。

彼の名は雉子波祐介(きじなみ ゆうすけ)。

彼は震災で帰宅困難区域からいわきに避難してきており、
今生きてるこの場所を書き留めておくために絵を描きはじめたという。

そうして二人はバス停で待ち合せたりLINEをしたり、
距離を縮めていく。


物語に大きな起伏はなく、
薄暮の景色が好きな女子高生の、恋愛と青春を混ぜ合わせたお話。

こういう恋愛したかった、なストーリーでした。笑

なんとなく気になって、
ふとしたきっかけで話すようになって、
どんどん好きになって、
そして…

という展開。

すべてが順調だったわけではないけれど、
恋の一番楽しいところを切り取った感じです。

佐智が主人公なので佐智目線のお話ですが、
雉子波くんのほうが積極的にアプローチしているので、

彼の方に焦点を当てるとより恋愛色強めのストーリーになりそう。
たぶん相当悶えていたと思うよ、彼。笑


≪ 自然の風景 ≫

自然には不思議な力がある。

眺めて、包まれているだけで心を癒してくれる。

佐智は文化祭に向けて四重奏を練習するも、
先輩にできていないところを指摘されてばかりでうまくいかない。

そんなふうにもやもやしたときには、
このバス停の風景に癒されるのです。

私もまさに高校生の時に同じようなことをしていたなあ。

吹奏楽部で、演奏がうまくいかないことなんてよくあることで、
もやもやしたときには河原へ寄り道。

わざと川沿いに帰って遠回りして。
でもそうすると不思議と家に着くころにはすっきりしてるんですよね。

そうして何度心を救われたか。

だから佐智の気持ちはすごくわかる。
残念ながら胸キュンな出会いはなかったですけれど。笑

薄暮って意識して見たことがないけれど、
夕暮れにゆったり眺めてみると心癒されそう。


● キャラ&声優
佐智を演じるのは桜田ひよりさん、
雉子波くんを演じるのは加藤清史郎さん。

二人ともどちらかというと淡々とした話し方でした。

そういうキャラクターでもあるから、
合っていると言えば合っているのだけど、
どうもセリフがすっと心に残りませんでした。

周りのキャラは安定の声優さんたちだったため、
食われがちだったな…。笑

特に佐智の友だちのひいちゃん。

キャラが面白いのもあったけれど、
演じる佐倉綾音さんが力入ってて好きでしたw

演技としてもキャラとしても、
完全に持っていってたよ。笑


● 音楽
【 主題歌「とおく」/ AZUMA HITOMI 】

美しい曲と歌声でした。
「薄暮」というテーマにぴったり。

だけど良くも悪くも普通で、
こちらもあまり印象に残らなくて…。

なんだかもったいなかったです。


● まとめ
全体的に大きな起伏はなく。

がっつり本気に部活しているわけじゃないけれど、
目標に向かってまっすぐで、
本番を終えた達成感というのはいいものですね。

演奏が終わって、
立ち上がってふらつくのとかリアル。
(私もよくやった。笑)

恋愛に関しては、
振り返ってみると佐智は特に何も頑張ってないのよね。笑

{netabare}
気になった相手からアプローチ受けて、
相手に別に思っている人がいるんだと知ってショックを受けて、
でも最後にはあなたが好きだと告げてもらって嬉し泣き。
{/netabare}

恋愛慣れしていない感じの雉子波くん、
頑張りました。

目線が合わなかったり震えていたり、
そういう描写がわざとらしくも見えたけど、
初々しくてなんだか微笑ましくもありました。

障害もなく流れる恋愛ものが好きなら、
この作品は合うと思います。

逆に、困難を乗り越える描写が欲しい人には、
かなり物足りなく感じるでしょうね。
時間も短いですし。

私は嫌いじゃなかったです^^

投稿 : 2025/03/01
♥ : 12

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

簡単には言い表せない福島の空模様と青春の心模様と

ショートアニメ『blossom』(岩手県 未見)
『Wake Up,Girls!』(宮城県仙台市 全作視聴済)
に続いて福島県いわき市を舞台した山本 寛監督・東北三部作の中編劇場アニメ。

形容し難い青春の諸々(幼少期の被災体験も含む)を抱えた
バイオリン少女と絵描き少年が夕暮れ時の福島の空の下、
互いの芸術表現も通じて曝した心を触れ合わせて交流を深めていく。


【物語 4.0点】
詩的で文芸的。かつ、こっぱずかしいくらい古風。
主人公少女のモノローグが主導するシンプルな構成。

同じ風景を共有した少女と少年の恋慕への発展など、
青春アニメはおろか、実写映画でも絶滅危惧種ではないかと思うほど、
失われた王道を驀進する。


被災地が舞台ではあるが、真実を暴いてやろう等という、ゴシップ趣味は希薄。
聖地巡礼効果も目論み、“明るい”福島を描いたという本作においては、
震災も少女と少年のトラウマも表面上は克服されたように見え、
被災者もこの世界に価値と居場所を再発見しようとする心の復興の段階。

帰還困難区域からの避難者であるという少年の過去についても
言葉でハッキリと説明されることはない。


バイオリンの音色や絵画、空模様に反映された心模様を読み解くことが求められる。
多分に感性に訴えかける内容。


【作画 4.0点】
人物作画はソースは潤沢じゃないけど、伝えたい心情を表情に込めることは出来ている。
けど、やっぱり十分な制作体制で作画安定度を高めた登場人物を見てみたかった……となる。
お馴染みの山本 寛監督&キャラクターデザイン・総作画監督・近岡 直氏のタッグ。

特筆すべきは美術監督に起用されたMerrill Macnaut氏。
仙台市出身の日本人でショートアニメ動画の自主制作経験もあり。
薄暮の空に色付いた“緑色の光線”まで描写した絵画的な背景美術は、
この世界にまだ残された価値を再認識させるのに十二分な説得力を持つ。


私はAmazonプライムで100円増しのHDレンタルで視聴しましたが、
それに見合うだけの物はありました。


【キャラ 4.0点】
ちゃんと生理も来る主人公のバイオリン少女。自身の置かれた青春の状況を、
かじった文学等も元にして自問自答するだけの感受性を持つ。

言葉じゃ吐き出せない諸々を少女は音楽で、少年は絵画で表現する。
こんな芸術的アウトプット回路を保有する高校一年生……。


記号化された萌えキャラやイケメンとは真逆のベクトルでの非実在感。
だが、だからこそ本作には現実では心に引っ掛かってなかなか出て来ない物を
具現化する夢があるのだと思います。


深夜アニメの形式美が恋しい方の拠り所として?
一応、主人公と同じ部活の女友達“ひいちゃん”(CV.佐藤 綾音さん)が、
非モテ・アイドルオタクの現実逃避等を放言してくれたりはしますw


【声優 3.5点】
ヒロイン役に桜田 ひよりさん。相手少年役に加藤 清史郎さん。
共に子役としてキャリアを積んできた俳優をメインに据え、
脇を“ちゃんとした声優”(しかもかなり豪華)で固める布陣。

メインの演技はたどたどしいが、確立された“ちゃんとした声優”の好演の中で、
初心な少年少女像を浮かび上がらせるという狙いは成就しており、
“ちゃんとした声優”以外のアニメは認めん
という風潮に対するカウンターにはなっている。

でも、やっぱりメインの演技は拙いけれども。


【音楽 4.5点】
バイオリン演奏が特徴の本作。
心が荒れ模様の時にはしっかり乱れる演奏シーンで青春の機微を好表現。
劇伴もバイオリンをふんだんに取り込み追随する。

ED主題歌はAZUMA HITOMIさんの「とおく」。ピアノベースの静謐なバラード。
“辛矢 凡"氏の歌詞世界で淋しさの中にも、しっかりと希望の花が咲く。


【感想】
夕焼け空をいつまでも眺めていたくなる……。
そんな、すっかり忘れ去ってしまっていた大切な気持ちを思い出させてくれる、
心地よい余韻が残る作品でした。

あとは心の損壊防止のためにも、
何でもいいから感性は磨いておいた方がよいとも思いました。

正気に戻りたい時に、心の片隅に確保して置きたい一作です。

投稿 : 2025/03/01
♥ : 23

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

アニヲタよ騙されるな!上品な青春映画に隠されたヲタク要素!!これぞヤマカンの集大成!!!

『blossom』、『Wake Up,Girls!』と東日本大震災以後、東北を舞台とした作品を手掛けてきたヤマカンこと山本寛監督の東北3部作と位置付けられたシリーズの3作目
福島県いわき市が舞台の52分の中篇映画です


福島県いわき市の女子高生、小山佐智は音楽部の所属
文化祭で披露される弦楽四重奏の発表に向けてヴァイオリンの練習に励む日々
高校の帰り道、通学路から少し外れた田園に囲まれた田舎道での夕刻時、佐智はよく一人になりたいと思ってその場所に訪れる
茜色の夕景と、深藍の夜空の間に生まれる緑色の空、薄暮を楽しむ為だ
ある日のこと、自分しかいないと思っていたいつもの帰り道のその場所で、いつも帰路のバスを共にする他校の男子生徒と遭遇する
男の子の名前は雉子波(きじなみ)祐介
美術部の彼は展覧会用の風景画を描いているのだという
その日から誰もいない田園風景で、2人の若者のだけの逢瀬が始まったのだ…


企画立ち上げ当初からクラウドファンディングや仮想通貨での制作費回収を謳い流石ヤマカン、挑戦的だなと思いました
が、出資者向け試写会で完成が大幅に遅れていることが露見すると、正直ちゃんと公開するのか?という不安の方が大きくなり、半信半疑のまま鑑賞することになったのがヤマカンを評価してる身でありつつもオイラの正直な気持ちでした


ですが実際に本編を観てみるとあまりにも完璧な作品だったので暫し唖然


そもそも近岡直さんキャラデザ総作監の美少女が画面一杯に出てくる、というだけで十分価値のある作品なのに!
原画には湖川友謙さんや平松禎史さんや足立慎吾さんや追崎史敏さんもいる!
もはや奇跡ですね、オイラの心配など吹き飛ばすクオリティです
確かに本来アニメートされるべきであろうカットが止め絵になっていた箇所が1,2点ほど観受けられましたが、演出上は気にならないレベルです
もし円盤化のチャンスがあればリテイクされる可能性もあります
今作を機にヤマカンはアニメ制作を廃業する、というのですが正直「辞める辞める詐欺」であって欲しいと思います
だってこれは“アニメが好きな人にしか作れない映画”だからです


ヤマカンは「アニヲタは観に来るな」と煽ったそうですが、とんでもない!
アニヲタであればあるほど気付くであろうヤマカンのアニメへの、そしてヤマカン自身の作品への愛、そんなものが今作には詰まっているのが受け取れます


まず一番の目玉となる弦楽四重奏の演奏シーンが特に目に付きますよね
ライブシーンというのはヤマカンの十八番ですからもちろん観応えがあります
それに文化祭のモブの中にはどこかで見覚えのあるキャラ達の面影がw
音楽部の部員は某アイドルとそっくりの姿も観受けれるw
主演には子役出身の桜田ひより、加藤清史郎を配して等身大の高校生感を出しつつも、脇を固める声優陣はヤマカン作品の常連ばかりw


アニメが好きでなければこんな映画は作れませんって
ヤマカンは今作の構想を20年前から温めていたそうですが、「いわきを舞台にアニメを」という話が持ち上がった時にふとこの構想を思い出したそうです
いわきは美しい、これは事実です
そしてその形を、アニメ映画という形に残す意味が、震災後だからこそあるのだと今作は教えてくれます
アニメ、というのは時として目で観る現実の風景以上の印象を視聴者に与えることが出来てしまいます
震災後の、今のいわきの姿を、いつか変わってしまうかもしれないこの風景を、アニメとして残すことの意義を感じ取れる映像だと思いましたね


そして何より、今作はどんな人が観ても良い話だ、と感じ取ることが出来る上品な青春映画に仕上がっています
これを最も評価したいと思います
当のいわきの人達が不快に感じるような作品であっては駄目ですからね
オイラも池袋シネリーブルで今作を観ましたが、びっくりするぐらい客がいないんですよw
今作はもっと評価されるべき!と強く感じました

投稿 : 2025/03/01
♥ : 9
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